クライミング雑記帳

ボルダリングとリードクライミングについてのあれこれ

人工靭帯を用いた研究から靭帯、腱についてのトレーニング方法を調べる

人工靭帯を用いた研究により靭帯、腱のトレーニングについてわかっていること

Minimizing Injury and Maximizing Return to Play: Lessons from Engineered Ligaments

この論文は人工的に合成された靭帯をもとにした研究です。クライミング的には靭帯というよりは腱の方が鍛える対象としてはメジャーかと思います。靭帯も腱も両者ともに構成成分のほとんどがコラーゲンなので同じものと考えて良いようです。

 

この論文によると

  1. 負荷の頻度、強度を変えても腱の分子応答には違いがない。過去に動物実験でアイソメトリック、アイソトニック、エキセントリックとトレーニングを変えても分子応答に違いがなかったというデータと一致している。
  2. 分子応答に違いが出る唯一のパラメーターは時間である。運動開始後10分以内に分子反応は最大となった。それ以上継続すると反応は低下し、もう一度運動に反応を開始するまで6時間かかる。
  3. 1,2の結果から負荷が軽い、運動範囲が狭い運動であってもコラーゲンの新生をさせるに十分な運動となる。
  4. 前十字靭帯断裂のリスクは女性が男性の4-6倍と高い。実験でエストロゲンを投与するとコラーゲン量は減少しないが靭帯の硬さが低下する。
  5. 成長ホルモンは靭帯、腱のコラーゲン量や強度には効果なしだったが、インスリン様成長因子1はコラーゲン量の増加、強度を高める作用があった。
  6. 筋肉に比べて靭帯、腱の栄養学はまだわかっていないことが多いがホエイとロイシンは腱の肥大をもたらす。
  7. コラーゲンを構成するアミノ酸(プロリン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン)をビタミンCと一緒に添加すると、コラーゲン合成を改善できる。コラーゲン合成に良い影響を与えるアミノ酸は、グリシンプロリン、リジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリンである。これらはゼラチンに多く含まれている。運動の1時間前に15gのゼラチンを接種するとコラーゲン合成が2倍になるという実験がある。

といったことが書いてあります。

 

 腱の成分はほぼコラーゲンである。ゼラチンは牛骨、牛皮、豚皮、魚鱗などから抽出されますがこれらのうちコラーゲンからゼラチンが生成される。コラーゲンを処理して可溶化されたものがゼラチン(新田ゼラチンHPより)。またコラーゲンとゼラチンのアミノ酸組成はほぼ同一。

 

 ゼラチンの価格は1kgで2500円くらい。対してコラーゲンは500g4500円位と高価です。BCAAはバリン、ロイシン、イソロイシンの3種のアミノ酸ですが、これは1kg4000円くらいみたいです。

 

 ゼラチンを買って軽い負荷で10分以内の運動を1日3回やる、ゼラチンをどうやって飲むのかに課題がありますが指の腱をこれで鍛えられるかどうか。もう少し調べて見る必要がありそうです。